メモリ(DRAM: DDR3, DDR4, DDR5)の市況・動向
7月にDDR4の動向について、当コラムで紹介致しました。現在に至ってもDDR3、DDR4、DDR5の全ての世代で「入手難・長納期・価格高騰」の傾向が顕著であり、この状況は構造的な要因によるものと見られています。一部では見積依頼さえ辞退され、受注を停止しているような事例も見受けられます。

価格高騰・品薄の主な理由
AI向け「HBM」への生産シフト(最大の要因)
AIサーバーやAIアクセラレータに不可欠なHBM(High Bandwidth Memory)の需要が爆発的に増加しています。HBMは通常のDRAMよりも利益率が非常に高いため、Samsung、SK hynix、Micronなどの大手メモリメーカーは、既存の生産ラインやリソースをHBM向けに集中的に転換・投資しています。結果として、PCやサーバー向けのDRAM(特にDDR4)mp生産ラインが戦略的に縮小され、「意図的な品薄」状態が生み出されています。
DDR4の生産終了と供給不安
大手メーカーの一部がDDR4の生産を段階的に終了する方針を示しており、これが市場に強い供給不安をもたらしています。
産業機器や既存サーバーなど、DDR4を必要とする根強い需要(ライフサイクルの長い製品)があるにもかかわらず供給が絞られるため、将来的な不足を懸念した企業による「パニック買い」や「買い占め」が発生し、価格がさらに高騰しています。一部では、DDR4の価格が最新のDDR5の価格を上回る「価格逆転」現象も見受けられます。
DDR5の構造的需要増
DDR5は主にデータセンターの建設ラッシュ(AIサーバー需要)に牽引され、高クロック・大容量モデルで特に在庫逼迫と価格急騰が起きています。
当社製品の対応表
| DDR3 |
DDR4 |
DDR5 |
| AS-1361G,AS-1366G |
AS-1560G,AS-3610G |
AS-1570G,AS-3554G |
|
AS-1530G,AS-1531G
AS-3552G
|
|
AS-1580G |
今後の見通し
AI分野の成長は今後も続く見込みであり、HBMなど高性能メモリへのリソース集中は変わらないため、DRAM全体の価格高止まりと長納期はしばらく続く可能性が高いようです。長期的な在庫計画の見直しや、代替品の検討、部品調達リスクを考慮した製品設計が求められています。

ストレージ(NANDフラッシュ: CFast, M.2, SSD)の市況・動向
NANDフラッシュメモリ市場も、メモリ(DRAM)市場と同様に「静かな回復」から「反転上昇」のトレンドにあります。
市場回復・価格上昇の主な要因
データセンター向けSSDの需要爆発
AIとクラウドデータの需要急増により、エンタープライズ向けSSDの需要が爆発的に増加しています。これにより、NANDフラッシュ全体の供給がタイトになり、契約価格の上昇に繋がっています。
メーカーの生産能力削減(減産)の影響
2023年の一時的な需要減を受けて、NANDフラッシュメーカーは在庫調整のために一時的に生産(ウェハー投入)を減産していました。その後の需要急拡大(特にデータセンター向け)に対して、生産体制の回復が追い付いておらず、供給不足感が増しているようです。
契約価格の上昇
最新の情報では、NANDフラッシュメモリの契約価格は上昇傾向が予測されており、特にエンタープライズ向けSSDの価格は、AIとクラウドデータの需要急増により最大で10%程度の上昇が見込まれています。
各製品の動向
M.2/SSD(コンシューマー・クライアント向け):一般ユーザー向けの1TB/2TBなどのクライアントSSDは、今のところ比較的安定しているものの、エンタープライズ向けの上昇に牽引され、価格上昇の波が徐々に広がる可能性があります。
CFast(産業用):CFastはNANDフラッシュをベースとするため、NAND全体の価格上昇と、産業機器特有の長期供給が必要な需要構造により、供給不安と価格高騰の影響を受ける可能性が高いです。
当社製品に使用されるストレージも大きく影響を受ける可能性があります。
当社製品の対応表
| CFast |
M.2 |
| AS-1361G,AS-1366G |
AS-3610G |
|
AS-1530G,AS-1531G
AS-3552G
|
AS-1570G,AS-3554G |
|
AS-1560G
|
AS-1580G |
今後の見通し
ストレージ市場は、DRAM市場に比べて動きは緩やかかもしれませんが、データセンター需要にけん引された価格反転上昇トレンドは継続すると見られています。
不揮発性メモリ技術の進歩や、永続的メモリソリューションへの需要増加も、市場の成長を後押しする要因です。
まとめ
AI革命という巨大な構造変化が、DRAMとNANDフラッシュの両市場に供給制約と価格高騰を引き起こしています。特に産業機器や既存システムで使われるDDR4やCFastなどは、最新製品向けの増産優先により、入手難と価格高騰の影響が最も顕著に出ています。
当社としましては、先行所要情報などを展開し「もの」の確保に努めています。価格については、メーカー価格を了承せざるを得ず、交渉の余地がありません。ご注文・納期など含めて、個別に担当営業から調整させて頂いております。何卒ご理解とご調整の程お願い申し上げます。
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(掲載日:2025年12月11日)
